「天使は、彼女のところに来て言った。『おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる。』マリアはこの言葉に戸惑い、いったいこの挨拶は何のことかと考え込んだ。すると、天使は言った。『マリア、恐れることはない。あなたは神から恵みをいただいた。あなたは身ごもって男の子を産むが、その子をイエスと名付けなさい。……』マリアは天使に言った。『どうして、そのようなことがありえましょうか。わたしは男の人を知りませんのに。』」
(ルカ1:28-31, 34)
この窓は、従来の構図と大変異なっています。従来の構図では、天使ガブリエルとマリアの関係は、対面の形や、天使が立ちマリアがひざまずく形をとっていましたが、ここでは天使ガブリエルがひざまずいてマリアを見上げ、右手に彼女の純潔を示す百合の花を掲げ、左手を大きく広げて神からの恩寵を伝えています。
一方、突然現れた天使の言葉を聞いたマリアは、右手を胸にあてて、その心の動揺と恥じらいを示し、左手を大きく広げ、「どうして、そのようなことがありえましょうか……」と、反りぎみの身体の動きで表現しています。
また、マリアの背後の空間は、曲線で大きくうねり、彼女の心の動揺の激しさを表わし、マリアは動、ガブリエルは静の形で描かれています。