五千人の供食

五千人の供食

ヨハネによる福音書6章1~15節

男性の数だけでも五千人という人々に、イエスがパンと魚とを与えられたという物語は、4つの福音書すべてに記されております。人々によほど深い感銘と驚きを与えた話であったからだと思うのですが、ことにヨハネによる福音書は、第6章のほとんどをこの物語のテーマである「パン」を中心として書いています(ぜひ6章全体を読んでみてください)。福音書記者のヨハネは、この出来事の中に、いつまでも飢えることのないパン、命のパンの与え手であり、またパンそのものとしてのイエスを見いだしているのです。

ヨハネによる福音書のみ、そのパンと魚を差し出したのは、一人の子どもであったと記録しています。子どもは、自分の事など考えず、黙って差し出しました。パン五つと魚二匹。この福音書だけが、ここで「子ども」を登場させているのですが、それは、つぶやいている大人たちと対照させるためであったのかもしれません。子どものようなイエスに対する無心な信頼を示したかったのでしょう。とにかくこの少年は、子ども心にも、イエスという先生のお役に立てば、と無心にそう思ったのです。自分の頭上で交わされるイエスと弟子たちとのやり取りを聞いて、持っていたすべてを差し出したのです。大人は、その持っている量やパンを調達するためにかかる費用に気をとられるばかりで、肝心の目の前におられる主イエスを見ようとしません。子どもはそこにおられるイエスさまに喜んでいただくことだけに集中しました。

イエスは、その子どもの気持ちを愛でて、しるしを行われたのです。

寄贈:金城学院みどり野会


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