親子をあたたかくつつむ場所。
床も天井も外壁も、木をふんだんに使った建物。大きな窓からさし込む柔らかな光。
住宅地にあるのに、まるで森のロッジにいるように気持ちがほどけていきます。
ここは金城学院大学が運営する「KIDSセンター」。四季折々の風景のなかで、子どもたちの元気な声がこだましています。
金城学院大学KIDSセンターは、人間科学部が展開する3学科(現代子ども教育学科、多元心理学科、コミュニティ福祉学科)の研究成果を地域社会へ還元し、主に0〜2歳児の子育てを支援することを目的に、2015年10月に開設されました。目指したのは金城学院にしかできない子育て支援。現センター長で、設立の準備段階から関わってきた現代子ども教育学科の日比野直子先生は言います。
「金城学院ならではの子育て支援ってなんだろう。金城学院らしさを改めて見つめ直し、導き出した答えが“豊かな資源”でした。周りを囲む豊かな自然。大学の知的資源、研究成果。未来を担う若い人的資源。そしてこの学院の根幹をなすキリスト教精神。この豊かな資源を最大限活かし、訪れる親子を大切に迎え入れ、その子らしい成長をあたたかく見守っていく場所にしよう。そう決心したんです」
そんな強い思いをもって生まれたKIDSセンター。施設の中には、良質な遊具や絵本をそろえた遊びの広場、砂遊びや水遊びができる中庭があり、子どもたちはそこでお絵かきをしたり、どろんこ遊びをしたり。自由に遊ぶ子どもたちを、保護者とスタッフが談笑しながらやさしく見守っています。
子どもを育む豊かな環境づくりを目指すKIDSセンターの魅力は、大学の強みを活かした多彩な活動。食環境栄養学科教員による離乳食や幼児食の講座、幼稚園教諭による遊びの講座など、学内の教員を中心とした専門家による「子育てセミナー」もそのひとつ。親子が楽しく参加できる「親子教室」では、造形教室やヨガ教室などを開催。隔週金曜日に実施する「子育て相談」では、臨床心理士が子どもの発達や育児に関する相談に対応。毎週木曜日は音楽療法士による音楽療法を行い、発達に困難を抱える子どもたちを継続的に支援しています。
KIDSセンターはまた、保護者や子ども同士はもちろん、学生や地域のお年寄りの方々との多世代間交流を大切にしています。地域の方々が学生と一緒にイベントのサポートを担ってくださったり、遊びの広場で日常的に関わったり。核家族化や近所付き合いの希薄化が進み、子育て世帯は社会から孤立化し、不安や悩みを抱えやすい状況にあると言われています。世代を超えた社会の人々とのゆるやかなつながりのなかで子育てをしているという実感は、子育て世代に大きな安心と力をもたらすのではないでしょうか。
KIDSセンターは学生にとっても貴重な経験が積める、大切な場所。現代子ども教育学科の日比野ゼミでは、毎年後期に3・4年生が協力して親子遊びのイベントを開催。0〜2歳児親子にクッキングや制作活動などを楽しんでいただきます。学生は主体的にイベントの企画・運営に携わることで、課題発見力、解決力、協働性などの実践的な力を身につけていきます。
さらに、全学部の1・2年生対象科目として実施されている「KIDSセンタープロジェクト」では、さまざまな学部学科の学生が協力しあってダンボール遊具の製作に挑戦。学内で募った学生ボランティアも、授業の空き時間を使ってKIDSセンターのスタッフのサポートをしています。また、国際情報学部の授業「広告コピー制作」(庫元正博先生担当)では受講生がKIDSセンターのPRをテーマにポスターを制作。KIDSセンターで培ったそれぞれの経験や学びを自らの成長の糧にしています。
「ここを訪れた学生たちは、まず子どもたちの愛らしさに心を奪われます。そして、親子と直接ふれあうことで、子どもの独自性や成長力、そして保護者の子どもへの愛情の深さや保育力に驚き、感激しています」と日比野先生。KIDSセンターでは、学生、スタッフ、子育て世代、おじいさま、おばあさま世代まで、幅広い年代の人々のあたたかなつながりの中で、今日もたくさんの親子が心豊かな時間を過ごしています。