薬学部薬学科6年生の花本彩さん(林高弘研究室)が卒業研究として取り組んだ「Influence of Brain Metastasis on Analgesia-Related Outcomes in Patients with Lung and Breast Cancers Treated with Naldemedine: A Propensity Score-Matched Analysis」が、2023年11月、英文学術雑誌 ‘Journal of Clinical Medicine’ に掲載されました。
オピオイド鎮痛薬はがん性疼痛のコントロールに用いられる医療用麻薬です。脳に作用して鎮痛効果を発揮しますが、胃腸にも作用するため高い頻度で便秘を引き起こします。この副作用をオピオイド誘発性便秘といいます。オピオイド誘発性便秘に対する治療薬として、2017年6月よりナルデメジンが使用できるようになりました。ナルデメジンは胃腸においてオピオイド鎮痛薬と同じ受容体へ作用し、オピオイド誘発性便秘を特異的に改善するため、臨床現場でも広く使用されるようになりました。また、ナルデメジンは有害物質の曝露から脳を守る役目を果たしている血液脳関門を通過しない構造のため、オピオイド鎮痛薬の鎮痛効果には影響を与えないと考えられています。
一方、脳転移を伴うがん患者さんなど、血液脳関門が破綻している可能性がある患者さんではナルデメジンが脳に移行してオピオイド鎮痛薬の鎮痛効果を減弱させる恐れがあります。しかし、実際にそのような効果減弱が起きるかどうかは不明でした。今回、肺がん患者さんと乳がん患者さんを対象にナルデメジンを使用した際、脳転移がある患者さんでは脳転移がない患者さんと比べてオピオイド鎮痛薬の鎮痛効果が減弱するかどうかを検証しました。その結果、オピオイド鎮痛薬使用中にナルデメジンを併用した際の鎮痛効果は、脳転移がある患者さんと脳転移がない患者さんとの間で差を認めないことを明らかにしました。
なお、本研究は藤田医科大学医学部薬物治療情報学との共同研究として実施したものです。
論文は下記リンク先からご覧いただけます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38002612/