3月3日から9日までの一週間、国際情報学部の学生がシンガポールとインドネシアを訪問し、ジョグジャカルタ市のムハマディア大学で開催された「国際異文化フォーラム2024」で研究発表を行いました。
参加者は同学部2年の井戸咲和伽さん、縣茉那さん、林湖子さん、岩本茉佑さん、森田彩葉さん、佐藤優衣さんです。各発表テーマは「福島ALPS処理水」「沖縄米軍PFOS・PFOA」「風の光を見る〜観國之光・利用賓千王〜」「日イ両国恋愛観の相違」でした。いずれも2年次の「国際情報演習」で研究に着手し、これを継続深化させたものです。
フォーラム会場には大学関係者や学生約200人が参加し、日本の社会問題の現状や課題についての発表を熱心に聞いていました。今回の発表はこれまでに取り組んだ研究テーマについて、さらに沖縄や東北などに現地訪問調査や、インドネシアからの留学生へのヒアリング調査を行ない論文として纏めたものです。
また、国際フォーラムでの発表ということもあり、言葉使いやパワーポイント制作に考慮し、事前にラーニングコモンズで何度も練習を重ね現地に乗り込みました。発表者の縣さんは「オーバーツーリズム問題で京都の例を上げ、参加者へ質問を投げ掛けるなど、コミュニケーションを取りながら進めました。日本語を学ぶ学生の参加もあって、観光事業だけでなく、アニメやマンガ、日本の歴史についても高い関心を持つ学生が多いことが分かりました」と感想を述べました。
井戸さんは「福島のALPS処理水に関する問題を取り上げました。日本同様に地震が多いインドネシアでは、東日本大地震や原発問題について参加者はある程度知ってはいたものの、原子力発電所がない為、原発による環境汚染については詳しく知らない人が多く、意外でした」と驚きを隠せませんでした。
岩本さんは「沖縄米軍基地問題をテーマに発表しました。海外で行うプレゼンテーションはどのようにしたら伝わるか、普段大学で行うようなものとは違う工夫をしました。例えば漢字にふりがなをふったり、イラスト中心のスライドを作るなどです。日本で起こっている沖縄の水質汚染問題については、この問題に国境は無く、世界中の人に知ってもらうことが大切だと実感しました」と振り返っています。
林さんは「イスラム教の文化に触れ、体感することで新たな価値観を身に付けることができました。ムハマディア大学ではちょうど卒業式が行われおり、それは応援合戦のようでした。卒業式はインドネシアでは大変に盛り上がる行事という事を直接見て感じました。また、同い年のインドネシアの学生と話し、恋愛感や食文化の違い、マナーの違いに気づくことも多々あり、普通の旅行では絶対にできない、自分の知らない世界を垣間見られた研究発表体験でした」と成果を述べています。
森田さんは「日本とインドネシアの恋愛観の相違というテーマで発表しました。しかし、会場セションでは、日本のいわゆる「三高」をインドネシアの学生たちも重要視している事実が判明。さらに、インドネシア人は男女共に嫉妬深いという事。そして、日本人以上に恋愛話が好きでかなり露骨な話も平気でするという状況も明らかとなり本当に意外でした」と驚いていました。
これらの発表を聞いた同校のデディ・スラヤディ(Dedi Suryadi)教授、ロシ・ロシア(Rosi Rosiah)教授は、共に「学術的にも社会的にも注目される事象をテーマに、斬新な視点からの研究アプローチがなされている。また、発表プレゼンの技術レベルが格段に高く本当に素晴らしく、全ての発表に思わず引き込まれた」と称賛の言葉を述べました。
多くの成果と発見、そして評価を貰ったのフォーラム終了後、参加学生たちは現地の学生のアテンドの元に市内の各所を訪れたり、翌日からも終日行動を共にするなど、このフォーラムを通じて多くの交流機会が生まれました。
今回の研究発表の指導を担当してきた国際情報学部・磯野正典教授は「インドネシアの大学と交流は前任の山本郁朗名誉教授から引き継ぎ12年になる。正規の授業の「KIT」としてもこれまでにも多くの実績を残しているが、今回も現地の大学から高い評価を得る学術研究発表が行われた事は、これまでの地道な積み重ねと、何よりもこの取り組みに自主的に参加した学生達の情熱の賜物であろう。
一般に大学での短期海外研修は時に様々な理由から観光・視察的なものも見受けられる。しかし、本学の「KIT」はそれとは異なり参加者が大きな成果を着実に出し続けている。そして、インドネシアでの展開は、その後の学生同士の交流につながっているだけでは無く、現在、本学とムハマディア大学との交換留学プログラムの実現に向けて、国際交流センターをメインに協議がなされつつある事などから、新たな局面に発展していることからも大変に意義深い活動と評価できる。早くも来月にはムハマディア大学から日本でのインターンシップに参加する学生との交流会が企画されるなど、学生たちの活動は次のステップに発展し、学生同士による自主活動の取り組みは独自の展開を繰り広げつつり、これこそが大学できっかけを得て、自ら学ぶことの典型だ」と語っていました。
これらの学生による自主ゼミの活動は、磯野教授の名前に因み「勝手にカツオゼミ」と呼ばれる、海外の大学を含めた他大学15校のネットワークを持つインカレ活動です。