澤野弘子さん(林高弘研究室・卒業生)が取り組んだ研究「Risk factors for residual liver recurrence of colorectal cancer after resection of liver metastases and significance of adjuvant chemotherapy」が、2024年7月、英文学術雑誌 ‘Asian Journal of Surgery’ に掲載されました。

大腸がんは進行すると高率に肝臓へ転移します。診断時に既に肝転移のあるものを同時性肝転移、大腸がん根治手術後1年以上経過してから肝臓に再発した場合を異時性肝転移といいます。肝転移の進行による肝不全は大腸がんの最も大きな予後規定因子となるため、大腸がん治療ガイドラインでは完全切除が出来る場合は肝転移巣の切除を弱く推奨していますが、肝転移切除後の残った肝臓への再発率は50%近いとの報告があります。そのため、肝切除後に抗がん剤による再発予防治療(術後補助化学療法)を行うことが多いのですが、その期間や治療レジメン、治療を行うことの意義に関してはまだ十分な結論が出ていません。さらに、過去の多くの臨床研究では同時性と異時性の肝転移を合わせて解析することが多く、同時性と異時性を分けて解析されている論文はほとんどありませんでした。そこで今回、残肝再発のリスク因子を調査するため、同時性と異時性に分けて解析を行いました。同時性肝転移では、リンパ節転移のある場合と肝転移が3個以上の場合で予後が悪く、術後補助化学療法を実施すると予後が良好になることがわかりました。一方、異時性肝転移では、肝転移が3個以上の場合で予後が悪いとの結果を得ましたが、術後補助化学療法を実施しても再発抑制効果の乏しいことがわかりました。以上より、術後補助化学療法は、同時性肝転移の肝切除後に対して推奨できることを明らかにしました。本研究は、藤田医科大学医学部総合消化器外科および薬物治療情報学との共同研究として実施したものであり、今後の大腸がんでの肝転移切除後の治療戦略に役立つことが期待されます。

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