谷澤環さん・長瀬はるかさん(林高弘研究室 卒業生)と中尾優里さん(林高弘研究室 6年生)が薬学部薬学科で卒業研究として取り組んだ研究「Compatibility of hypokalaemia caused by low-dose prednisolone plus abiraterone acetate therapy for metastatic castration-resistant prostate cancer」が、英文学術雑誌 ‘Journal of Pharmaceutical Health Care and Sciences’に掲載されました。
前立腺がんの治療に対して、がんの進行を抑制するホルモン療法が行われます。しかし、ホルモン療法を続けているうちに、男性ホルモンが抑えられているにもかかわらず前立腺がんが進行してしまう場合があります。このような状態を去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)といいます。mCRPCに対する治療法の一つとして、アビラテロン酢酸エステルという抗がん剤が用いられます。この抗がん剤は男性ホルモンの合成に関わるCYP17という酵素の働きを抑えて効果を発揮しますが、この作用が男性ホルモンだけでなく副腎皮質ホルモンの分泌まで抑えてしまうため、この抗がん剤を使うときには副腎皮質ホルモンを飲み薬などで補充する必要があります。一般に、プレドニゾロン(PSL)という薬を併用しますが、現在推奨されている1日量10mgを長期的に使用した場合の副作用発現を懸念し、1日量5mgに減らすことができないかということを検証しました。その結果、血液中のカリウム値の変化に注意することで、PSLの1日量5mgでの治療継続が可能であることを明らかにしました。本研究は、刈谷豊田総合病院薬剤部、同病院泌尿器科、岐阜県総合医療センター薬剤部との共同研究として実施したものであり、今後の前立腺がん治療に役立つことが期待されます。
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左より:田中國晃常勤顧問(刈谷豊田総合病院泌尿器科)、榊原隆志がん薬物療法認定薬剤師(同病院薬剤部)、谷澤環さん(同病院薬剤部、卒業生)、
滝本典夫薬剤部長(同病院薬剤部)、鳥居昌太外来がん治療認定薬剤師(同病院薬剤部)、林高弘教授
左より:林高弘教授、中尾優里さん(6年生)、鳥居綾助教